2007年07月10日

苦労

佐渡の大日蓮聖人像


数年前「法華経の行者 日蓮聖人」というDVDの演出をした。
この作品は絵巻と日蓮聖人ゆかりの地を組み合わせて日蓮の生涯を辿るという内容のものだった。
構成・監修を立正大学名誉教授の中尾堯先生にお願いした。
中尾先生は日蓮学の権威で日本古文書学会会長もされている。
昭和8年生まれの中尾先生はとてもパワフルな人だった。
房総半島・山梨県身延・比叡山延暦寺・佐渡・伊東など日蓮聖人の足跡を中尾先生と共に辿った。
僕は日蓮についてまったく知識も興味もなかったが、中尾先生との会話や先生の著書を読んでいるうちに気がついたらすっかり日蓮マニアとなっていた。

「ウエムラさん、いま清水市の寺にいるんですけどね。日蓮聖人のお葬式の時の出席者名簿が見つかったんですよ。いまから来て下さい」と電話があった時はすぐに車を飛ばして清水まで行った。
「これはすごいですね」と日蓮聖人のご真蹟を眺めながら先生と一緒に子供のように興奮した。

この作品は完成するまでに難航を極めた。
試写で中尾先生がOKを出したものをクライアントの出版社からダメだしがでる。
いちから編集をし直すと出版社からはOKが出るが今度は中尾先生が納得しない。
さすがにへこんでいる僕に中尾先生が言った一言がふるっていた。

「日蓮聖人の苦労なんてこんなもんじゃないですよ!」

思わず笑ってしまった。
浄土宗の信者に襲われ殺されかけたり、幕府に処刑されそうになったり、島流しにあったりした日蓮聖人と比べたら僕の苦労なんて苦労のうちには入らない。
なんとか作品は完成し最終的にはいいものになった。

今でも仕事やプライベートでへこんだ時は先生から言われた言葉を思い出して乗り切っている。
「日蓮聖人に比べたらオレの苦労なんて」と。

写真は佐渡島にある世界一大きい日蓮聖人像。

日蓮(中尾堯著)


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この記事へのコメント

1. Posted by kyonosuke   2007年07月05日 12:17
スバラシイお言葉ですね。苦境で思い出すたび、生き延びられそうな気がします。私も有難く頂戴させていただきます。

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